中国戦での小林幸司(日本)
アジア競技大会レポート、やや筆が重くなってきた・・・というよりはやや雑事にかまけているというところ。また、さまざまなところから依頼されたアジア大会関連の資料やらなんやらの製作がようやく一段落したところ(あと少しです)。皆さん遅くなりもうしわけありません。なかには今後のナショナルチーム合宿で使用されるものもあり、お役にたてればなりよりです。
レポートはいよいよ団体戦最終日に移る。書きたいこと伝えたいことはたくさんあるが、また書けないこともおおい。そのジレンマに苦しむ?日々・・・。それにしてもデイリーレポートというスタイルをとったことがどうもまずかったような、どうしても先走りたくなってしまうのである。試行錯誤しながら進むことします。会場の天河運動公園付近。右手のオレンジのテント群は入場者のためのセキリュティチェック。
この四枚は大会前日の日本選手の調整風景。
勝負はついに3番勝負に。
国別対抗が3組点取り戦になって以来4度目となる韓国vs.台湾。その全てが3番までもつれている。一番台湾、二番(シングルス)韓国、という展開も全く同じ。
韓国は韓国代表決定戦(韓国予選)二位のイヨン・チヨンミン、台湾は台湾代表決定戦一位のリン・リュウ。韓国ペアはともに国際大会初出場になる。
イヨン、チヨンミンとも質のいいカットサーブを持ち、オールラウンドにプレーをこなす、が、イヨンはシングルシャフトのラケットを使用し、(本来ベースライナーであるイヨンが)最初からネット際にポジションすることも少ない。セカンドサーブは両名ともオーヴァーヘッドということがおおく、(ダブルフォワードという点では)ベウオンソン・キムテジュンほどの徹底振りはなく、やや中途半端といえなくもない。積極的なダブルフォワードではなくて、ダブルフォワード対策としてのダブルフォワードにもみえる。
ゲームは大接戦だが、台湾のリン・リュウが終始押し気味の展開、特に前半は韓国ペアが国際大会初出場ということで、そのかたさが感じられ、リン・リュウが最初の3ゲームをあっというまに奪う。しかしそこからイヨン・チヨンミンが必死で食い下がる。ゲームカウントは台湾ペア3−0のリードから3−2、4−2、ファイナルと推移。
前のめりのボジションから、古典的な雁行陣、ベースライン平行陣、そこからの猛烈なネットダッシュ、大きなロビングでふたたびベースラインへ、と、陣形はめまぐるしく変化し、超モダンな高速展開に息もつかせない。
イヨン・チヨンミンは、大きくリードされた後半では特に引き気味のポジションをとる。リン・リュウはどん欲にネットをとろうとし、韓国はそれをなんとか阻止しようと技とつくす、両者必死の攻防である。
韓国ペアの大きなロブが効果的、またアングルショットまぜ、じりじりおいあげる。しかしそのロブの効果を韓国ペア自体が感じ取れないのか、徹底しきれない。
ファイナルは韓国ペア2−0のリードからリン・リュウが一気に5ポイント連取。
イヨン・チヨンミンはサーブアンドボレーでたたかれ、またせっかく雁行陣に持ち込んでも自らじれてミスとやや一方的。最後もリンのあらっぽいサーブアンドボレーが豪快に決まり幕。
リン・リュウ 5 (4-2,4-0,5-3,3-5,1-4,4-1,3-5,2-4,7-4) 4 イヨン・チヨンミン
試合終了は22:00(現地時間)過ぎ。明日にそなえて日本男子スタッフも最後まで観戦。
ヤン・リー快勝で台湾一勝のあとのシングルス。台湾は郭家瑋、韓国はイヨハンともに国際大会初出場の学生選手である(郭は台北体育学院 イヨハンはテグカソリック大学)。
さてイヨハン(←)はプレヴューでも書いたように謎の男だった。とにかく実績がなくて情報がない。韓国予選取材時はスケジュールの都合でシングルスを最後までみることができなかったためだ。代表までありそうな(つまりシングルス予選で優勝しそうな)強豪はだいたいわかっているつもりだったので、有力選手の写真は予選リーグの時点で押さえてあった。それもかなり間口を広くして撮影したつもりであったのだが・・・。
韓国は2007年の世界選手権男子シングルスでベスト4独占している。2008アジア選手権ではベスト4に二人。その6人ともユニークつまりダブりがない。韓国にはシングルス強豪がひしめいている。そんななかで有力と思われる選手すべてをおしのけて代表を勝ち取ったとことになる。
今回、日本、台湾ともシングルスではアジア競技大会いや四大国際大会初出場の若手(中本、郭)が出場した(郭は台湾シングルス予選優勝)。年齢もほぼ同世代(イヨハンが一番年少)だが、中本、郭ともにある程度キャリアをつんでいる。中本はチャイニーズカップ等の活躍で国際的な知名度も高いし、郭(→)は2008中山盃国際大会、2009台湾国体(王、林等国際大会タイトルホルダーが出場)でもともにシングルス優勝、今年のチャイニーズカップ団体優勝時はシングルスで全勝と代表に勝るともおとらない実績である。ヨハンにはそういうのが、全く、ない。ただ韓国ではこういうことが時々起こる。思えば4年前のドーハ大会がそうだった。ドーハのシングルス予選優勝はナンテクホ。それまでの実績は皆無だった。ただあの時はシングルス予選まで取材したので、彼が強豪を倒して予選を勝ち上がるさまをつぶさにみることができた。そういえばナンテクホもテグカソリック大の選手であった。現在はソウル市体育局所属(ソウル市庁)。2008年シングルス予選で優勝し、そのままアジアチャンピオンになったキムドンフンもテグカソリック大。過去4回の国際大会シングルス予選中3回にテグカソリック大の選手が優勝したことにになる。
ゲームは終始、イヨハンのペース。韓国選手らしいオールラウンドな打球技術がベースにあるが、かといって韓国シングルスの主流というか、特徴といってもいい、マッチョなそれではない。彼はダブルスでは前衛をつとめる選手ということもあってか、強打強打で押しまくるということがないのである。むろん速いボールはあるが、それ主体ではなく、プレースメントを大切にし、さまざまな球種(スピン)を繰り出し、知的にゲームを構築してくる軟投派のシングルスである。まあほtんど予想通りのテニスであった。
一方郭はサウスポーということをのぞいては極めてオーソドックスなスタイル。パワフルではないが、ドライブボールを基本とし、ときどきカットボールを混ぜてくる。ただ、やはりサウスポーというのは大きな武器である。サウスポー独特の『懐』を良く知っていて生かせる選手だ。
G3-1とイが大きくリードし、テニスが大胆に、つまり仕掛けが増えテニスはおもしろくなるが、、当然リスクが増大、そんななかで郭が粘り腰をみせ4-2,8-6と盛り返し、ファイナルに。この直前のフィリピン戦で破れ落ち込んでいた郭だがさすがに力をみせる。ファイナルはふたたびヨハンのペースになるが、最後は8−6でイヨハン。紙一重の勝負となったが郭にマッチはない・・・・いずれにしてもシングルスはつまらない。しかけたほうが必ず苦しくなる。テニスが縮みがちになってしまうのである。
イヨハンはこの日から4日後の個人戦シングルスで金メダルを獲得。韓国男子としては2大会振り二人目の金メダル。四大国際大会ということでは3大会連続12回目の優勝ということになる。4大国際大会では計15回シングルス個人戦が競技されているが、その内の11回が韓国の優勝。残り4回が台湾である。15回中ハードコートでは6回開催されており、そこでの成績はイーブン、つまり韓国、台湾ともに3勝ずつということになる。日本の優勝は残念ながらまだない。
韓国vs.台湾。何度も書くようにアジア競技大会では2大会振り(八年振り)、四大国際大会ということでは4大会振り(5年振り)に実現した。STAGE-1(予選リーグ)最終戦、ここまで両国とも全勝であり、すでにstage-1突破は決定、つまり勝敗に関わらず翌日の準決勝に進出することは確定している。しかし、勝てば準決勝の相手は中国であり、今年の中国チームの力なら、決勝進出は確定といっていい(銀メダル確定だ)。負ければ日本と決勝進出を賭けて戦うことになる。つまり消化試合どころか準決勝に匹敵する大試合ということになる。ドーハでは日本vs.台湾という予選最後の大一番があった。日本は敗れ、韓国との準決勝にまわっている。 ↑は前日練習での韓国男子
この2国(韓国、台湾)、21世紀はいってから5回対戦しており台湾の3勝2敗。現在台湾が3連勝中(2003広島世界選手権、2004チェンマイアジア選手権、2005マカオ東アジア競技大会)、台湾のあげた3勝は何れもハードコート。3戦すべてが最終戦までもつれ、いずれもシングルスで韓国が一点獲得という点まで同じ展開、つまり台湾はダブルスで全勝して3連勝した(2003、2004、2005)。その6勝中5勝までがダブルフォワード、しかもダブルフォワードだった5人(のべ10人)のプレーヤーの内、いわゆる後衛として育った選手は王俊彦だけであとの4人(ファントゥンシン、リュウチャルン、リーチャーホン、イエチャリン)は本来はネットプレイヤーとして鍛えられてきた強者ばかりだった。つまりダブル前衛によるダブルフォワードだったのである。2004年リュウチャルン・リーチャーホン、2005年のイエチャリン・リーチャーホンである。無論、王俊彦もハードコートではまったく後衛の面影は残さず、生粋のダブルフォワード野郎としてふるまう。(誤解してほしくないのだが、そういう選手を選抜してチームをつくったわけではない。台湾は代表の全てをオープン予選で決定する。予選の結果だけが全てだ。今回もダブルス予選を2回、シングルス予選を一回おこない、その優勝者がそのまま代表となっている。毎回そうである。つまり予選を勝ち上がった選手がオールラウンダーだったということである。選手選考に関しては韓国も同様。両国ともに日本的な意味でのナショナルチームは存在しない)
韓国は2003の決勝でヨンドン、キョンハン、バンジュンを擁し、しかも個人戦で完勝(上位を独占)しながら、台湾にまさかの敗戦を喫した(団体戦決勝のみハードコートだった)。この団体戦の3番勝負でダブルフォワードが登場したのである(王・趙)。
韓国人にとってアジア五輪よりも大切な世界選手権でのまさかの敗戦。しかもだれがみても最強メンバーだった釜山(アジア五輪)、広島(世界選手権 個人戦のみ)での圧倒的な勝利のあとのこの一敗は衝撃であった、なにしろ台湾は若手の集団、ファントゥンシン以外は全員が20歳そこそこの新人だったのである。
韓国は翌年からの日本より一年早くダブルフォワードに取り組み、国際大会に臨む。2004アジア選手権ではキムジェボク・パクチャンソクがはやくも個人タイトルを獲得。これは本格的なダブルフォワードとしては世界初の個人タイトルといえ、本家台湾より先んじたことになるわけだ。1985世界選手権優勝の劉・頼もダブルフォワードだ、という意見は当然あるとおもうし、こころのなかではそれに同調したい。
しかし、団体戦ではほぼ勝利を掌中にしながら信じがたいミスジャッジで惜敗、このミスジャッジはまさに歴史的なミスジャッジといえ、これがなかったら今の男子テニス界は全く違う様相を呈しているのでは、とおもえるほど。この敗戦が響いたのか、翌年以降の韓国男子は大崩れ、マカオ(東アジア五輪)、ドーハ(アジア五輪)でいいところなく大敗した。ドーハでの監督はキムジェボク・パクチャンソクを育てたテグカソリック大の監督であり、彼の手腕、それにヨンドンの復活と胸おどるテニスを期待したが、テニスも無惨、結果も無惨であった。
以降2007、2008と舞台はクレーに移り、当然のようにそこは韓国の独壇場、男女合わせて二年間でのべ14の種目中12の金をかっさらう・・・・という経過がある。
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さてオーダ。
台湾 NO.1ヤン・リー NO.2クォ NO.リン・リュウ。今回このオーダで不動。
韓国 NO.1ぺ・キム NO.2 イヨハン NO.3イヨン・チヨンミン。シングルスはイヨハンで不動。ダブルスはここまで1番と3番を交互に入れ替えてきたが、このオーダが本命だろう。
トップ ヤン・リー vs.ペ・キム。いきなり胸躍る今大会の目玉ペア同士の対戦である。ヤン・リーとキムテジュンは2007アジア選手権でも対戦。キムテジュンのペアは韓国一の天才児イゾンウだった。その時は韓国ペアが5−2で勝っている。ヤン・リーにいいところは全然なかったように記憶している。
韓国のサービスからスタート。出足からヤン・リーの気迫が凄い。最初から久々にみる前のめりのヤンリーである。かたさはあるがやることがふっきれている。一方、韓国ペアはぺウオンソンががちがち、特に第一ゲームは手が縮んでテニスにならない。クィックネスもまるでない。一本目のショートボールの処理をミス、次はクロスロブを大きく放り出す。ボレーも二本浮かし、と、がたがた。キムテジュンはそんななか落ち着いてボールをさばき切れもよかったがどうにもならない。
チェンジサイドでペウオンソンが落ち着き、ラケットが振れだす。激しいゲームになり競り合いとなるが、ぐいぐいポジションをつめてくる台湾ペアに韓国ペアは終始退き気味でプレーせざるを得なくなり、防戦一方、その限りにおいてはうまいしいいプレーも多々有るが、自分たちのテニスではない。あくまでヤン・リーのペースでゲームは進む。 第二ゲームでペ・キムは2本あったゲームポイントもいかせず。リードしたヤンリーはだんだんに堅さがとれて、超攻撃的ななかにも融通無碍、と手がつけられない強さをみせはじめる。これほどいい状態のヤン・リーはドーハ以来である。3−0の台湾ペアリードから韓国ペアは1ゲームかえすのが精一杯だった。大きく先行したヤン・リーに勝てるペアなどたぶんこの世に(いやあの世にも)いないだろう。5−1でヤンリーの圧勝。
ただスコアほどの差はないというか、特にキムテジュンの手堅たく冷静なプレーは切れもよく、まずまず。ペウォンソンの立ち上がりがいくらなんでも悪すぎた。
W.T.ガルウェイ著: 新インナーゲーム
必読書!!よまなきゃなにもはじまらない。 (★★★★★)
玉木 正之著: スポーツとは何か(講談社現代新書 1454)
ソフトテニスについては触れられてはいないが、ソフトテニスとはなんなのか、を考えるには欠かせない。 (★★★★)
ブラッド・ギルバート共著: 読めばテニスが強くなる
庭球書誌学参照 (★★★★)
日本ソフトテニス連盟編: ソフトテニスコーチ教本 新版
こちらは中、上級者向けと銘打ってある。連続写真はこちらも多数 (★★★)
日本ソフトテニス連盟編: ソフトテニス指導教本 新版
あらゆることを一通りカバーしている。連続写真も多数。地域スポーツ指導者養成テキスト。 (★★★)
榎並 紳吉著: 基礎からはじめるソフトテニス(012 sports)
元世界チャンピオンで現男子ナショナルチームの斉藤コーチがネットプレーの模範をしめしており、それだけでも価値がある。 (★★★)
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